第九章 2019 6 新しい道(1)
今更ながら思うことですが、日々の健康管理と同時に不慮不測の事態に備える貯蓄、出来る範囲の資産形成が人生には必要です。もうひとつ「なんとなく」契約しているケースが多い保険商品の再検討も必要です。自分の死後、家族が受け取るタイプのものだけでなく、治療・リハビリに専念できる生活保障など、家族ならびに自分自身をいざという時に安定させる保険への元気なうちの加入をお勧めします。
6月。ライター兼デザイナーとして独立した。鎧を脱いだと言うか、企業のしがらみから脱したと言うか。仕事第一主義からの撤退と感じもしたが、周囲や家族は「やっと顔色が良くなったね」と喜んでくれた。久々のストレスフリーだ。これで晴れてリハビリと体調管理中心の生活が実現、退院後初めてフルでリハビリを受けることができた。
そんな折、突然奇跡が起きた。訪問してくれている創心會三人娘のうち最年少・グッさんの施術を受けているとき、促通運動のタイミングが合わず右上肢が完全に伸びきったところにグッさんの体重がかかった。非は私にあった。
グギッ!! という音ともに激痛が走り、身体を丸めたまま動けなくなった。以後のメニューが出来なくなり時間終了。グッさんは半泣きで「すいませんが整形外科を受診されてください。私の責任です。できる限り責任を…」、「いいよ、そんなもん」。・・・グッさんはうなだれて帰り、こちらは「ふり出しに戻ったか…」と落胆著しく、痛む右腕をさすり続けた。
・・・・・一夜が明けた。
右腕がいつもと違う。入院時から苦しめられてきた肩甲骨まわり〜右肩の鈍痛と右肩〜右腕の筋緊張が嘘のように消えている。ホントに「うそ〜」である。今までは寝返りもままならず、クシャミや咳をすると数分間うずくまっていた。右肘から指先まではまだ思うに任せないが、なんと肩周りまでは復旧した。「奇跡だよ」。すぐにグッさんに連絡した。グッさんの技術と人柄が生んだ奇跡。そして愛すべき創心會三人娘が日々の積み重ねで生んでくれた成果でもある。発症後初めて歩けた時もそうだがリハビリはこれがあるからやめられない。
継続していれば確証こそないがいつか何かが起こるかもしれない。
創心會三人娘、恐るべしである。
療法士の施術を受けるだけで機能が回復するなんて考えが甘い・・・とよく言われる。リハビリには自主トレが不可欠だ。しかしわかっていてもおろそかにしてしまうのが自主トレ。入院中は身体が言うことをきかず、日々の施術でつい満足してしまう。また幾分身体が動くようになって退院すると、今度は仕事や生活に追われ自主トレどころではなくなる。しかしこれからは自主トレにも注力できる、と言うことで・・・・・創心會三人娘に効果を相談しつつメニューを組み立てた。気休めに終わってはダメだが、仕事の合間に自主トレに励めるよろこび。「はぁはぁ」肩で息をし、汗をかくうれしさ。
「やりすぎ注意ですよ〈笑〉」・・・・・創心會三人娘からのメッセージ。
左手親指が付け根の激しい痛みで動かなくなった。思えば発症以来、全ての生活シーンを支えてくれたのが左手であり、仕事はもちろん、食事からトイレまで全ての生活行動を左手親指でまかなっていた。
痛みはいずれ引くと思っていたが、ヘアスタイリストの友人から「放置すると動かなくなる」と忠告され、近所の整形外科へ。バネ指自体初耳だったが、レントゲン診察の結果、重症一歩手前と言われ迷わず筋肉へのステロイド注射を選択。これを3週に渡り3本!! 死ぬほど痛かったが、おかげで無事完治した。片手が麻痺等で不自由化すると「生きた」手の親指に過度な負担がかかる。痛みが増すと精神的負担も生ずるため、治療は早い方が良い。
コンマイ、トガちゃん、グッさん。創心會三人娘のリハビリ施術を中心に生活が回りはじめた。とは言え週3回・各40分・計120分。その限られた時間をいかに有効にするかが自分なりのテーマでもある。
ヘルパーさんと協力しての食事ケア〈減塩減カロリー〉を徹底することで血圧・血糖値が安定、さらに適度な睡眠と日々の運動(ウォーキング・自主トレ)を欠かさないことで初めてリハビリ効果が期待できる。ただ少しずつ。本当にささやかな効果を継続するしかない。
同時に、日々のコンディションには波があるので体温、血圧、血糖値などについて、あまり日々の数値変動に一喜一憂しないこと。細かい項目を気にしすぎても気に病みストレスに負荷がかかるため、体温は37.0度を越えなければまず大丈夫。血圧は120-130台を目安とし、それを越えた場合、無理をせず静養する。また血糖値は100-120を目安とし、それを越えた場合、摂取カロリーを調整し、イタズラに食事を抜いたりしない。ただ体重だけはほぼ一定に保てるように留意する。急激な体重増加や減少は糖尿病合併症のリスクを招くからだ。
リハビリは体調そのものを純化することはできない。リハビリを受ける者が、リハビリ効果を得られる体調をつくり上げるべきである。
やっとスタートラインに立てた。
悲観せぬよう。
闘いはこれからだ。
(第十章につづく)